月下の幻 太陽の偽り (仮)
その時だった。

ぴんぽんと甲高いチャイムの音が家中に響き渡る。

時間は午後6時を少し過ぎていた。

「やっぱり…」

私はそのチャイムを鳴らした張本人が誰なのか分かっていた。

この時間帯ならほぼ間違う事は無いだろう。

私は玄関の扉を開け、言った。

「またごはん?」

「もっちろん、一人暮らしの貧乏苦学生に愛の手を!」

「瑞穂が貧乏なのは認めるけど、苦学生は認められないね。」

「さっすが歩美、分かってるねぇ。」

皮肉が全く通用しない。

流石と言うかなんと言うか…

瑞穂がマイ茶碗とマイ箸を持ちながら玄関前に立っていた。

かつての日本で豆腐を買いにいく時に豆腐屋まで鍋を持っていき、その鍋の中に豆腐を入れて持ち運んでいたと言う話があるが、それに似たような感じで瑞穂は私の家の前にいた。

美人が台無しだ。


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