月下の幻 太陽の偽り (仮)
親子
瑞穂が帰り、家が静かになったのは9時頃。

静かな家に付きっぱなしのテレビの声が虚しく響いていた。

私は無言でテーブルの椅子に腰を掛けた。

それからも無言のまま、座っていた。

母さんはもうすぐ帰ってくる頃だろうか、息を吸い最大級の溜め息をついた。

聞かなきゃいけない。

真実を知らなきゃいけない。

でも怖い。

私の耳元でもはっきりと分かるくらい心臓が高鳴っている。

しばらくして、予想通り母さんは帰ってきた。

握りしめた左手をさらに強く握った。

「ただいま~」

お疲れ混じりの弱々しい挨拶が玄関から聞こえた。

余程ハードだったに違いない。

その言葉に、私は返事しなかった。

「ん、歩美?」

返事がなかったのが不思議だったのか、私の名を呼んでいた。

母さんが玄関を渡り、しばらくすると台所までやって来た。

「もう、ちゃんと居るんだから返事くらいしてね。」

そう言って私の近くにある椅子の上にカバンを置いた。

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