月下の幻 太陽の偽り （仮）

「母さん…ちょっと話があるんだけど。」

いつも通りの動作をする母さんに私はようやく声をかけた。

「お話？何かあったの？」

テーブルの隣に母さんが座るとそれを確認した私はテーブル下に隠していた例の改名許可書をテーブルの上に置いた。

母さんはそれを見た瞬間絶句していた。

「私の名前、本当はアリンなんだね…」

私がそう言った後も、何も言えないのか黙り込む母さん。

「私は、誰の子なの？」

その言葉を聞いて、母さんはようやく口を開いた。

「確かに、私は本当の親じゃない。本当の親も分からない。」

その言葉に私は強いショックを受けた。

やはり、親から言われてしまう血縁の否定は想像を超える衝撃だった。

でも…

「でもね、私は本当の親のように育てたつもりだよ。それだけは忘れないで。」

「…」

そう言われて今度は私が口を閉じた。

ありきたりだけど、母さんの言いたい事を深く詰めたそんな言葉だった。

多分、私はそんな言葉を待っていた気がする。

当たり前なのに、当たり前と捉えられなかったのかもしれない。

「歩美が里子になったのは赤ちゃんの頃だったから何も知らないよね。」