月下の幻 太陽の偽り （仮）

「里親の募集もしていて、旦那と色々考えて私はその子を受け入れた。その子の名前は…アリンだった。」

母さんがその名を少し躊躇いがちに言った。

「この日本でアリンなんて変だって旦那は言って、歩美って名前に改名をしたの。それからはずっと、歩美って言ってきてた。」

そう母さんは一気に言って、そして沈黙した。

私は質問をした。

「その教会は、式町の教会？」

その質問に母さんは小さく首を縦に振った。

「行くの？」

「うん、ずっと前から気になってた事だもの。だから突き止めたい。」

「そう…」

母さんは寂しそうに言った。

「あのね、ずっと歩美にアリンの事を言わなかったのはね、血は繋がってないけど私の唯一人の家族だったから、失いたく無かったからその名前をいつも遠ざけてたんだよ。子供の時にアリンの名前を歩美の口から聞いて心臓が止まるかと何度も思ったし、最近もアリンの名前を言うようになったから、いつかこうなるような気がして怖かった。」

「…大丈夫だよ母さん。」