血も涙もない【短編集】
えへへっと子供らしい笑い声をあげて本当に嬉しそうにあたしの腕を握った。
温度のないその小さな手を今度は振り払うことが出来なくて、あたしは握られた腕を見たまま動けずに居た。
…死んでる?
幽霊ってこと?
信じられない。
あたしのことバカにしてるの?
「お姉ちゃん、なんで死のうとしてたの?」
「え?」
突然のことに我に返ると、少年の言葉に心臓が震えた。
今、なんて言った?
「僕分かるよ。死のうとしてたよね、さっき。わざと信号赤なのに行こうとしたよね」
「……」
「死んだらダメだよ。残された人が泣いちゃうよ」
「知ってるよ、そんなの」
だって、あたしが、
その残された人なんだから。