血も涙もない【短編集】




好きな気持ちとか。

守ってあげたいって思ったこととか。

ずっと一緒に居たいって願ったこととか。



消えないよ、翔瑠────


「お姉ちゃんの大切な人も死んじゃったの?」

「…うん」

「そっか。泣いた?」

「うん、たくさん泣いた」

「それじゃあ…」


きっと、その大切な人も泣いてるよ、と言ってあたしの頭を撫でる。

不思議なくらいあったかくて。
不思議なくらい翔瑠に会いたくなったけど、死ぬのは止めようかと思った。

生きることが、
痛くても、苦しくても、
あたしが下を向いていたら、
きっと翔瑠が泣いちゃうからさ。


「そういえば、アイツ。男のくせに泣き虫なんだよ」


そう言って涙を拭うと少年から体を離す。
その時、見せた笑顔がほんの少しだけ翔瑠と被った。


「良かった。お姉ちゃんが元気になった」

「うん。ちょっと勇気出た」

「じゃあ、僕も頑張って成仏しようかな」


少年は強ばった顔して、でもなー、とぼやいた。
成仏?消えちゃうってこと?





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