血も涙もない【短編集】
鼻を摘まんで夜尋から目を逸らし天井を見る。
でも、気になって太もも辺りをチラリ。
いやいや鼻血が出たら困る。
でも……
「わかったわよ」
めんどくさそうに夜尋は組んでいた足を降ろす。
俺の命は繋がった!
ふぅとわざとらしく胸を撫で下ろすと、夜尋がその様子を呆れた顔で見ていた。
「さーてと、そろそろ先生に襲われそうだし帰ろかな」
夜尋は隣に置いていたバックを手に持って立ち上がると俺を見下すような憎たらしい顔をしていた。
襲わねぇよ。
お前のことなんて
眼中にも入ってねぇ。
やっぱ嘘。
その太もも、鼻血誘ってる。
「……ねぇ、先生…帰る前に一つだけ、弱音、吐いてもいい?」
「……あぁ、どうした」
それは、さっきまでのこいつではなく、大切な人を失った一人の、被害者。
今まで何人もの人を殺してきた者とは思えないほど弱く見えた少女。