血も涙もない【短編集】
確か、月も星も空の味方をしなかった真っ暗な夜だった。
道路の脇で真っ黒な格好の少女が小さくなっていて、べっとりと血のついた手に驚いて咄嗟に声をかけたのが始まりだった。
その時に言われた。
兄貴に恋をしている、と。
そして、殺し屋であると。
もう会うことはないと、
互いにそう思っていたから
俺も黙って話を聞いていた。
恐怖はなかった。
だって、俺よりガキだし、女だし。
それに俺は吸血鬼だって知っている。
ブラコンも殺し屋も、
どーんとこいだっ!!
しかし、これで終わりではなかった。
彼女は俺の勤める学校に入学してきた。
もう他人というわけにもいかなくなって、今となっては夜尋の秘密を知る唯一の人間となった。
でも、夜尋こんなに小さい夜尋を見たのは、あの出会った日以来だ。