血も涙もない【短編集】
これは一体なんなんだろうか。
女でいう母性本能ってやつか?男にもあるのだろうか。もしかして、俺が女なのだろうか。
あの日出会った時にも感じた、この変な感情。
なんとなく、ほっとけない感じ。
「辛いのか?」
俺は夜尋の小さな頭に手を置いた。夜尋は下を向いたままコクンと頷く。
なんなんだ、この得体の知れぬ感情は。母性本能もどきめ!
ほら、なんか守りたくなる。女って皆こうなのか?
これは女の武器なのか?
騙されちゃいけないのか?
「先生…お兄ちゃんに会いたい」
俺が変態なのが悪いのだろうか。なんかムラムラしてきた。ヤバイかもヤバイかも。鼻血出そう。てか、血が足りない。貧血だ。急に目眩が…
「えっ!先生」
ぼんやりとした世界が途端に真っ暗な世界へと姿を変えたのと同時に夜尋の声も遠くへと消えてしまった。