血も涙もない【短編集】
目を覚ますと、白い天井がクリアに見える。横にはテンポのいい寝息を立てた夜尋が眠っていた。
俺は…あぁ、貧血で倒れたのか。だっせー。せっかくいい感じのムードだったのに。ムラムラしてたのに。
ってこれでも俺、彼女持ちなんだけどさ。
辺りはすっかり暗くなっていて、時計の針を見ると、21時を示している。
「おい、夜尋。起きろ」
「むにゃむにゃ」
「おい、起きろって」
「すぴー」
「あからさまに、すぴー言うな。起きてんだろバカ」
「バカ言うな変態」
「あ?あんま教師なめてっと襲うぞ」
「いいよ」
ぶわわわっと赤面する俺に、夜尋は片目だけを開けてくすくすと肩を揺らした。
「子供かよ」
「うっせ。まだ青春したいお年頃じゃボケ」
「きしょい」
「女の子がそんな言葉使わないの。この年頃の男はデリケートなガラスのハートなんだから」