血も涙もない【短編集】
ふざけて笑っていると、夜尋は突然真顔になって、「先生、いっつも貧血気味だよね」と呟いた。
ドキッとして思わず話を反らす。
「あぁ、そーいえばベッドまで運んでくれてサンキューな。よくお前一人で運べたな」
「そりゃーね。時々、死体処理とかやるし」
「………なるほど」
妙に納得してから、鳥肌がぞわっと立った。
平気でそんなこと言うなよ。怖いじゃんか。ひらひらミニスカートから見える太ももはあんなに可愛いのに!
「ねぇ、先生。いいよ、あたし」
全く別世界に飛んでいた俺の思考が夜尋の言葉で戻ってきた。ただいまって手を振って。
「何が?……っ!!」
その瞬間、柔らかい何かが唇を塞ぐ。俺の視界は夜尋の甘い顔いっぱいになってまた目眩がしそうになった。
キス、してる?
恵実のとは違う味。
……鼻血出そう。