血も涙もない【短編集】
「……つまんないの」
誕生日なのに、なんだこれ。
なんでこんな虚しいんだ。
散らかった机の上の散らかった依頼書に手を伸ばす。
なんでケーキじゃなくて、依頼書ばっかりあるんだ。
「誕生日にまで仕事なんてしてられっかよ」
文句を吐きながら、適当に取った一枚の依頼書には髪の薄いまん丸のおっさんの写真と、その人の名前・年齢・住所・家族構成など数々の情報が書かれていた。
そして、最後に。
『殺してください』と。
「……皮肉なもんね」
人が人を殺してくれと人に頼むなんて。
世の中って怖いわ、と呟きながら愛用のナイフと依頼書だけを持ち家を出た。
帰って来た時にはちゃんとお兄ちゃんが温かく迎えてくれるだろうと、胸を踊らせながら……