血も涙もない【短編集】
悲劇の天使
夕日がボヤボヤとしている。
地面を歩く感覚がない。
人とぶつかっても通り抜けていく。
あぁ、なんか。
世界が遠くなったなぁ。
あぁ、なんか。
寂しい世界になったなぁ。
俺は、車の行き交う道路の真ん中に立ち尽くし、浮かぶ涙を必死に堪えていた。
泣くのはよそう。
俺よりも、きっと残されたアイツの方が辛いはずだから。
なんで俺はいつも泣かせてばかりなんだろうな。
ダメな彼氏だよ、本当。
なんでお前の傍に居てやれないんだ。
なんで俺、死んじまったんだ。
なんで俺なんだ。
なんで俺だったんだ?
なんで、なんで、なんで…
なんで俺が殺られなくちゃいけなかったんだ。