血も涙もない【短編集】
片目を開けてみる。
そこには小さな女の子。
明らかに俺を見ていた。
嘘だろ。
俺が見える?
「ままがいないの」
大きな瞳に涙を溜めてその子はそう言った。
迷子か。
……こんな幼い子を放っておくわけにもいかないな。
それに俺に触れて会話も出来ているし、怖がっている感じもないから幽霊であることにも気付かず声をかけているのだろう。
俺が変に動揺を見せたら怪しまれる。
にしても、こんな道の真ん中で倒れたヤツによく助けを求める気になったな。
どちらかと言えばこっちのが助けられそうな体勢してんだけど。
「お名前は?」
「かいらちゃん」
「かいらちゃんは何歳かな」
「んーとね、よっちゅ」
指を四本立てて見せるその姿に、自然と笑顔になれた。