血も涙もない【短編集】
家に着くと、部屋はどこも真っ暗で、玄関にはお兄ちゃんの靴が無かった。
時間は深夜2時を回っている。
今日はきっと彼女の家に泊まるのだろう。その前に、最初からそのつもりで家を出たのだ。
あたしに、お誕生日おめでとう、もないなんて酷い。
この家にはもうあたしとお兄ちゃんしか居ないんだから、誕生日くらいあたしの傍に居てくれたっていいのに。
ポタポタと滴る涙を拭うと、ぬちょっとした変な感触がして手の甲を見ると赤い血が付いていた。
「気持ち悪」
顔をしかめて風呂場に向かうと、直ぐ様シャワーを浴びてお兄ちゃんのベッドに入った。
お兄ちゃんの匂い。
今日はここで寝よう。
帰って来た時驚くかな。
でも、きっといつもみたいに
可愛いな、って笑うんだよね。