血も涙もない【短編集】
目元をくしゃっとさせて
ふわっと柔らかい笑顔で、
きっとお兄ちゃんは笑うんだ。
「…おはよ、夜尋。俺のベッドは寝心地いいか?」
「……お兄ちゃん」
目が覚めると、想像通りの笑顔がそこにあった。
あたしがお兄ちゃんに向かって手を両手を伸ばすと、嬉しそうに笑ってから、あたしを抱きしめるようにして上半身だけを起こした。
「…寂しかった」
「ごめんね」
「あたしのこと嫌い?」
「そんなことないよ。夜尋は世界で一番可愛い妹だ」
「妹じゃ嫌だ」
あたしはお兄ちゃんの服をぎゅっと掴んだ。もうおでこにキスくらいじゃ逃がさないんだから。
すると、楽しそうに、お兄ちゃんは肩を震わせる。
「じゃあ、彼女みたいなことしてほしいの?」
「……うん」
意地悪っぽいお兄ちゃんの顔に、簡単に緩んでしまったあたしの手はするりとお兄ちゃんの服から落ちた。
そして、あたしはそのまま押し倒されて心臓はドクンと音を立てあたしを掻き乱す。