血も涙もない【短編集】
血も涙もない
人間が動かなくなってしまった。
ちょっと、小腹が空いたから、軽く頂くつもりだったのに、止まらなかった。
「あー、また死んじゃった」
道端で声を掛けた名前も知らない男。
ちょっと肌を見せれば簡単に鼻の下を伸ばして付いてくる。
そーいえば、少し前に死んじゃった子はあたしの色気に釣られなかったなー、
まぁ、それにイラついて殺っちゃったんだけど。
男なら素直に尻尾振って付いてくればいいのよ。
それが、あの男ってば、
「彼女いるので」って。
何いい彼氏面してんだよ、
あたしだって彼氏くらい
たくさんいるっての。
「あー、食後なのに胸くそ悪い。死んだヤツのことなんか思い出してどーすんだ」
てか、名前も知らないし。
顔も忘れたんだけど。