血も涙もない【短編集】
幸せだ。
お兄ちゃんとこんな日が来るなんて。
「お兄ちゃん…」
「俺の妹は嫌なんだろ?ならそのお兄ちゃん、ての止めろよ」
「え…じゃあ、京夜(きょうや)」
「ふっ…やっぱ、お兄ちゃんでいいや」
お兄ちゃんはあたしの唇を人差し指でなぞると、満足そうに口元を吊り上げる。
「お兄ちゃん」
「なんだ?」
「楽しいの?」
「楽しいね、夜尋のこんなエロい顔めったに見れないからさ」
お兄ちゃんだって十分エロい顔してるよ、とそう言う前に唇を塞がれた。
お兄ちゃんに彼女が居ようと関係ない。
だって、一番近くに居るのはあたしだもん。
だから、いいや。
誕生日の日に一緒に居てくれなくても、あたしの誕生日だったってこと自体を忘れていても、許してあげる。
だから、いいかな。言っても。
お兄ちゃん、あのね。
「すきだよ」
END