血も涙もない【短編集】
窓が半分開いていて、
中には暇そうにソファに腰を掛けている先生が見えた。
先生はあたしの声に反応すると、ひらひらと笑顔で手を振る。
あたしは窓を完全に開き、そこから中に入った。
「いらっしゃい。今日は一段と鉄臭い」
「あぁ、さっき、ここ来る前にちょっとね」
「殺ったの?」
「殺るつもりはなかったわ。勝手に死んだのよ」
あたしは先生の向かいのソファに腰を降ろすと、先生が首を擦りながら、呆れたように言った。
「いつか俺もお前に殺られちゃうんじゃないの?一昨日だって結構吸われたし、そのせいで次の日貧血で大変だったんだからな」
そう言って、一昨日の傷が痛々しく赤を越えて紫色に腫れているのを見せつけられた。