血も涙もない【短編集】
あたしが先生の首筋を舌で遊ぶ。一昨日の傷口が腫れて膨れているのが分かった。
先生、食べてもいいかな……
────!!
その瞬間だった。
目の前が白黒で映し出されたような、変な感覚。
そして、先生の意地悪な笑顔。
…あれ?
この赤は何?
モノクロのこの世界に広がるこの赤は一体、何?
先生。
先生…
せんせい。
コレアタシノ?
「悪いけど、」
お腹の辺りが熱くて
手を当ててみると、
あたしの大好きな血が、
恐ろしいと思えるほど、
赤く、広がっていた。
「お前の餌となって死ぬ気はない」