血も涙もない【短編集】
女は笑いながら言った。
「せーかい」と。
そして、あたしの腹からナイフを勢い良く抜き取ると、血が舞う中で、不敵な笑顔が浮かぶ。
「でもね、ただの殺し屋じゃないわよ」
「なによ」
ドクドクと血が抑えている手の指の間から漏れていた。
血が止まらない。
傷が深すぎる。
意識が飛びそうになるのを必死に繋ぎ止めて女の顔を睨んだ。女は楽しそうに笑っている。その顔が不意に誰かと被った。
「復讐者。あなたをずっと恨んでいたわ。お兄ちゃんを殺した、あんたをね」
そう言った女の顔は、この前殺った彼氏の、死ぬ直前と同じ顔をしていた。
あぁ、アイツの妹か。