血も涙もない【短編集】
ふと気付いた時には、
そこは血の海と化していた。
恋を知り、愛を知ったあたしは、
裏切られた時の苦しみを、
血で流そうとした。
でも、この手に残った、
愛する人をこの手に掛けた自分への憎しみと、孤独は綺麗に流すことが出来なくて。
赤く染まった先生を、
ただ、ただ、見つめていた。
血も涙もない、
この場所で。
「先生…」
あたしは泣き方さえ分からずに、あなたを呼ぶだけ。
END