血も涙もない【短編集】
「おねーちゃん?」
あたしの顔を覗き込む少年を睨みながら、腕を振り払う。
「あたしあんたの姉貴じゃないから」
「そういう意味じゃないよ」
「分かってる。…てか、あんた…」
握られていた手を擦ると、あることに気づいた。
なんだこれ。
……こいつ、冷たい。
てより温度が、ない?
なにこれ人間?
「あはは…気付いた?」
「え?」
「人間触れたの初めて。すっごく嬉しい。それに誰かとしゃべるのも久しぶり。僕のこと見える人はめったにいないからね」
無駄に可愛い笑顔と
無駄に高い声で、
少年はこう言った。
「僕ね、死んでるんだ」