追憶の詩 -浮世抄華-
その彼の反応に私はつい笑ってしまった。
「笑うなよ…」
彼は私の頬を抓って来た。
「いひゃい、いひゃいれす!土方はん」
「「あ……………」」
私は焦った拍子に『土方さん』と呼んでしまった。
彼は怒るだろうか…?
私は恐る恐る頬を抓られたまま、彼の顔を見た。
「まあ、当分は許してやるよ」
呆れたように息を吐き、頬から手を離すと、彼は私を抱き寄せた。
やっぱり、彼は優しい…。
私は彼に身体を委ね、目を閉じた。
当分と言ったものの、私はあと数ヶ月は彼の事を『土方さん』と呼ぶ事になる。