追憶の詩 -浮世抄華-
第2詩 天へ願いを
慶応元年 7月某日。
梅雨の時期が過ぎ、京の空は蒼く澄み渡っていた。
私はほつれた皆の隊服を自室で直していた。
「ふう…、こんな感じかな…」
ようやく、最後の一枚を縫い終えた。
糸を玉どめして、残った糸を切ろうと鋏を入れようとした、その刹那――。
スパーン。
「涼!居るか!?」
「ひゃあ!」
ジャキン。
いきなり飛び込んで来たのは平助君だった。