初恋が終わる頃に





タバコの灰をトントンと指で地面に落とす。



あたしはゴクリと喉を鳴らして、彼の言葉を待った。



「…俺、女いるんだよ」



ボソリと呟いた彼の言葉が、何故かズキッと心に刺さる。



特に関係ないあたしがどうしてこんな心が痛いのか、分かんない。



だけどきっと彼の話す表情が、あたしの中にまで悲しさが割り込んでくるから。



「簡単に言えば、その女が浮気をした」



「……いつ、ですか?」



「ちょうど1週間前、お前と会った日の帰りかな」



ちょっと微笑みを見せた彼の目は…当然笑ってはいなかった。



悲しく辛くて苦しい、そんな感情が紛れている奥深い瞳。



あたしが気になって聞いたくせに、どう返していいのか頭を悩ませた。



いや。口から声が出なかった。





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