初恋が終わる頃に

シルバーの指輪






あれから結局、優木くんの事情を詳しくは聞けなかった。



思わず入り込むと、また傷つけてしまいそうで怖かった。



流れで別れを告げて家に帰ると、リビングの時計が21時を指している。



「はぁ…」



お母さんはお風呂に入っているのか、浴室からシャワーの音が響いていた。



お父さんは仕事の残業なのかまだ家には帰っていなくて、リビングには誰もいない。



あたしは重い足取りで階段を駆け上がり、自分の部屋に入る。



今日は眠れそうにないかも…



優木くんの悲しげな表情が頭の中から離れない。



連絡先さえ聞いていないので、またいつ会えるのかさえ分かんない。



優木くんの悩みを取り除いてあげるのは…あたしじゃないのかな。



ベッドに潜り込んで、携帯を開くと真美からメールが届いている。



ピッと受信BOXを開いて内容を覗き込んだ。



"帰ったら連絡して"



絵文字と一緒に送られてきた文章は、とてもシンプル。





< 31 / 81 >

この作品をシェア

pagetop