初恋が終わる頃に
…現実に無理やり引き戻ったのは、ある人が寝ているあたしの肩を揺すったから。
「…ん」
半分寝ぼけた意識の中で顔を上げれば、優しい顔であたしを見てる…
「…上野先…輩?」
何故先輩がここにいるのか分からなくて、一瞬思考が止まったが、やっと現実を思い出す。
事務所で寝ちゃってたんだ。
あくまでもバイト中なのに、誰にも伝える事なく睡眠をとってしまった事に今更後悔が押し寄せる。
だけど先輩は怒ってる風には見えず、どこか冷静な表情だった。
「ご、ごめんなさい…」
「瑞樹ちゃん、頑張ってたね?」
ニコリと微笑む表情に変わり、あたしの謝罪をかき消される。
「どういうこ…」
「俺、盗み聞きしちゃってたんだ」
あたしの言葉を最後まで聞かずに、舌をペロッと出して話した先輩。