高野先生の腕のなか



「あ、あの」


今日は用事はないはずだ、という高野にすこし焦る。


本人を目の前にすると、本当に断られないのか、不安になった。


テキストの表を高野に見えるように出して、しかし高野の目は見ないで言った。


「数学、教えてください」


高野は戸惑ったのか返事がなく、ますます不安になりちら、とそちらを覗くと、


「うん、いいよ」


嬉しそうな高野がいた。



.
< 125 / 357 >

この作品をシェア

pagetop