高野先生の腕のなか



私は、それ以上その場にいられなかった。


コップは買わずに、店を飛び出した。


人ごみを掻き分け、やっとのことでトイレに入った。


個室に入ってしゃがみ込む。


なんだか、あの日に似ているような気がした。


神山くんを嫌いになったあの日の朝の出来事に。


溢れた涙を袖で拭う。


私の恋は、辛いものばかりだな。



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