高野先生の腕のなか



高野は顎に手を添えて、考えこむ仕草をした。


「…大切、って言ったら、大切だけど……」


やっぱり。


予想通りだ、と納得して視線を落とした。ワックスの光る床には所々汚れが目立った。


高野は私を傷つけないように言葉を選んでいるのだろうか、だけど、の先を言いはしなかった。だから、私は「そうですか」と話を打ち切った。



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