高野先生の腕のなか



保志先生は話題を戻して、椅子の背もたれに深くもたれた。


「全く、困ったもんですよ。服装頭髪検査が終わった途端、穴開けてきちゃって」


耳たぶを触って言う保志先生。俺は、ああ、と相槌を打った。


「元から素行の悪い生徒なんですか?」


「いやね、いつもは″ホッシー″なんて呼んできて、生徒の中でも仲のいい方だと思ってたんですよ。少しチャラけているけれど、明るい性格でね」


保志先生は置きっぱなしだった冷めたコーヒーをずずず、と啜った。


そのコーヒーの味の悪さにか、さっきの生徒にかは分からないが、保志先生は、あー、と濁った声を出した。



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