高野先生の腕のなか
白濁したコーヒーを廊下の水道に流しながら、俺はさっきのことを思い返していた。
俺は、山崎さんの時のように、彼女を守りたいとは思わなかった。
流石に心配はしていたが、けれど、それだけだった。
俺は、山崎さんを特別に見ていたのか?
……いや、それはない。
あの日、偶然山崎さんを見つけた俺は、少なくともその段階では、名前を知っていた程度で。
それまでに特別会話を交わしたり行動を共にしたわけでもないし、一目見て意識したわけでもない。
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