高野先生の腕のなか



生徒に差をつけてはいけない。平等に接するように、と、教授にも教わったじゃないか。


水道を捻り、勢いよく流れ落ちる水をすくって顔にばしゃりと押し付けた。


冷静になろう。


この意識は、自分ではどうにもできないと思う。逆に意識しないようにと山崎さんを避けてしまっては、それこそ不平等だ。


だから、俺はこれから気をつければ良いんだ。安易に私事を持ち込まないように。さっきの生徒は、言葉通り見守るようにしよう。


俺は教師だ。


ただ、生徒が成長する過程の、一部を補助するだけの立場だ。


山崎さんにとっても、俺はただの時の人、なのだ……。



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