高野先生の腕のなか


高野が来る。そう察した。


「怪我、痛む?」


高野は目の前まで来て、立ち止まった。その足元に目を向ける。


「動かせば痛いけど、今は痛くないよ」


またプリントに目を戻す。


が、高野からの返事がない。


その場に立ち止まったまま、動き出す仕草も見せない。


不思議に思い見上げた。



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