高野先生の腕のなか



「…なんでよ……」


絢香がぽつりと呟いた。


放課後の教室棟は人気がなく、そのせいかその小さな声は私の頭に響いたように感じた。


「なんで…高野先生と…。近づくなって……近づくなって、言ったのに……」


カッターを握る手が震えている。それを抑えようと、両手で握った。



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