高野先生の腕のなか
手術中、という赤いランプが灯ってからどれだけ経っただろう。
今、山崎さんは頑張っているのに、俺は昔のことを考えてしまっていた。
最初は、身代わりだった。山崎さんを通して、美咲ちゃんを見ていた。
今度は死なせない。きっと、立ち直らせてみせる。そんな自己満足で、山崎さんを抱きしめた。
でも、本当は気づいていた。山崎さんは美咲ちゃんではない。山崎さんを救っても、美咲ちゃんは蘇らない。いや、違う。俺は美咲ちゃんを生き返らせるためにこんなことをしているわけではない…。
そんな葛藤を繰り返して、それでも山崎さんを手放せなかった。
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