高野先生の腕のなか



山崎さんは俺のことを好きなのだと思った。いや、好きだと思い込んでいるのだと。思えば弱味に付け入るように関係を持ったのだから、それも仕方がなかった。


もし、ここで山崎さんを突き放してしまったら、また過ちを繰り返してしまう。


本当に、山崎さんには迷惑な話だ。全て俺の自己満足。全て俺の自分勝手。


それが…。


俯く視界にネクタイが映る。山崎さんにもらった水色のネクタイ。


それが、いつからだろう。山崎さんを守りたい、と思ったのは。



.
< 329 / 357 >

この作品をシェア

pagetop