高野先生の腕のなか



高野はそんな私に状況を説明した。


絢香に私が刺されるのを、追ってきた高野が目撃したのだと。すぐ救急車を呼んで、傷口をハンカチで塞いだのだと。


そのおかげと、急所から外れた場所に装飾されたおもちゃ同然のカッターで刺されたことで、命に関わることなく数針縫う程度で治まったのだと。


そんな高野の話は耳には入るものの片側から抜けていき、ただ点滴に繋がれた腕を見て「ああ、生きてるんだ」と実感した。



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