高野先生の腕のなか



「山崎さんのことは知っていたんだ。数学係だったから。最初は、静かな子だな、と思った。クールっていうのかな。そんなイメージだった。それがあの日、ボロボロで、今にも崩れてしまいそうな女の子に会った。一つ間を置いて、あ、山崎さんだ、と思った。失恋して泣いていたという少女に、俺は、この子も女の子だ、と思ったんだ。失礼ながら」


微笑む高野。


何故だか今は、高野の方が崩れてしまいそうに見えた。



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