高野先生の腕のなか



神山くんは私を見ているわけでも、高野を見ているわけでもなかった。


ただ、ノートを見ていた。


数学の宿題でもやっていなかったのだろう、シャープペンシルを右手に持って、真剣な眼差しで、ただ、ノートを見ていた。


神山くんが私を見なければいけない理由なんてないのに。私は、裏切られたような悲しみにかられた。なんて自己中心的なのだろう。



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