高野先生の腕のなか



「じゃあ、嫌いじゃないってことね」


「それは、まあ」


「人間って不思議でね。ほんの小さな出来事で人を見る目が変わるの。好きな人を嫌いにも、なんでもない人を好きにもなるのよ」


授業の終わりを告げる、チャイムが鳴った。


私は、カタン、と音を立てて立ち上がった三木先生を見上げた。



.
< 74 / 357 >

この作品をシェア

pagetop