初恋デイズ

契約


「天川さん。一緒にお昼食べよ」

「…………」

「りおん。なにか返してあげなよ」

「奏と食べるからいいよ」

「りおんはもう少し、愛想よくできないの」

「奏は私が愛想よく出来ると思うの?」

「出来ないかもしれないけど……それだから、りおんは冷たい人だって思われるんだよ」

「別にいいよ。私には奏がいるから」


高校に入学して一年が過ぎようとした冬。
私は完全に女子のグループから孤立した。
女という生き物は面倒で一緒にいるのが苦痛だった。


「天川さん。よかったらこれ」

「……いらない。ごめんなさい」


渡された手紙を受け取ることもせず奏のもとに走っていく。
奏はため息をつきながら私の顔を見てくる。


「もらえばいいのに」

「その気持ちに答えることはないのにもらってどうするの」

「りおんって時々、酷く冷たいよね」

「…………」

「僕はそっちのほうがりおんに変な虫がつかなくていいけどね」


生まれて16年が過ぎるが友達という友達は奏だけだった。
幼い頃からずっと一緒にいるが未だに奏の性格は掴めない。


「奏は時々、わかんないよ」

「そうかな。それじゃね」


奏とはピアノ教室の前で別れて私は一人になった。

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