紙のピアノ。
ぴたりと曲が止んだ。
「あっ、お花だぁー…」
俺の方は見ず、舞い散る花びらを手で追いかける。
「何の花かなぁー…桜はまだだもんねー…」
なんだコイツ…。
まるで俺という存在がここに無いかのように振る舞っている。
花びらを追う無邪気な瞳と裏腹に、どこか空虚な口調。
そのアンバランスさが、余計彼女の不思議さを際立たせていた。
「……邪魔、座るな」
俺はもう一度声をかけ、足元に散らばった楽譜を手に取った。
「結ちゃんまだかなー…遅いなー…」
「……っおい!」
遂に堪らなくなった俺は、そいつに詰め寄り楽譜を突き付けた。