譲る葉
「ただいま」

お母さんが帰ってきたのは午後八時。

勤め先は、少し遠い。

これから晩御飯の用意をしてくれる。

「今日は早かったね」

お母さんが、相変わらず膝を抱える私に向かって呟いた。

最近のうちの会社は残業が多くて、九時を過ぎることもあるからだ。

「うん」

ひとこと言って、頷く私の目には

再び涙が溢れてきた。

止まってくれそうになかったので

私は毛布を被って顔を隠しながら

トイレに逃げ込んで、泣いた。

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