譲る葉
「ごめんね…」

それがお母さんの第一声だった。

「おかあさん、ちょっと疲れただけだから大丈夫よ…
あんたも辛いのに、そばにいてあげられなくてごめんね…」

どうして

あなたの口から、謝罪の言葉なんて聞きたくありませんよ。

謝らなければいけないのは、私の方なのに。

おかあさん、あなたは何も悪くないのに…

情けないことに、私の方は言葉が出ませんでした。


ぐっと涙をこらえた、病室の中―

私はあなたの手を、ただ握ることぐらいしか出来ませんでした。

この手の温もりを感じられなくなる日が来るのが

何よりも怖かったのです。
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