譲る葉
プルルルル…


電話のベルが、寂しい家に響き渡る。

ちょうどトイレに行っていた私は、急いで受話器に向かう。


電話は、嫌いだ。

ここ数日で、もう何十回も落胆を繰り返した。

いい知らせといえば、お母さんが意識を取り戻したという事ぐらいで、

あとは、訳の分からないセールスの電話や、

やっぱり…面接を受けた会社の不合格通知ばかり。

だから、全く期待せずに

「はい、もしもし」

受話器を取る。


< 53 / 131 >

この作品をシェア

pagetop