譲る葉
「…もしもし?もしもーし?」

電話を取ったはいいけど、相手は何も喋らない。

何だ、イタズラ電話か…

多少の怒りを覚えつつ、受話器を戻そうとした、そのとき―


『母親が心配か?』


「?」

電話の向こうから、老人の声がした。

しわがれた、おじいさんの声らしい。

「…あの」

『仕事は見つからんようじゃな。人生に絶望し始めたころか、いや、もうしきっているか』

こっちが口を開く前に、老人はすらすらと喋る。


一体、何を?

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