譲る葉
『もしもし、幸運喫茶店です』

怪しそうな店名だ。

これも変な勧誘か、と一瞬身構えた私は、相当キているらしい。

「あ、はい…」

とりあえず生返事。

『あの…この間、面接させていただいたんですが…』

え?あ、そうか…

電話の相手は、この前アルバイトの面接を受けたお店だった。

もうあちこち受けたので、店の名前なんて覚えてられない。

駅前にある小さな喫茶店で、家の近くの商店街は全滅した私が、一番最後に受けたところだ。

ああ…どうせダメだったんだろうな…

もう、電話のそばで一喜一憂するのは疲れた。

期待して落とされるなんて、もうまっぴらだ。
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