譲る葉
風吹く前に
あれやこれやと走り回るうちに

時刻はいつの間にか、午後一時。

―あと一時間か。

仕事も三日目。

研修が終われば、就業時間も長くなって

本格的に働ける―

その兆しが見えたかな、って思った。

少し時間が空いた店長が(今日は出勤していた)

仕込みのやり方を教えてくれたからだった。

まず、店長が見本をみせてくれて、私はその通りに真似る。

なかなかうまくいかない。

材料が思いのほか固くて、なかなか切れなかったり

形がだいぶいびつになったりした。

店長は、笑ってくれていた。

まだ最初だから、覚えていけばいいや―

そう思っていたのだと思った。

そのときの私は

ずいぶん考えが甘かった。

砂糖にシロップを混ぜたように


甘ったるかったんだ…
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